KOMI−SS集第八巻

このSSはかなりドロドロしてますんで注意!!
もし、直樹と保奈美が幼馴染じゃなかったらと言うストーリーです。
当然保奈美はいじめられてます、他のキャラも若干変わってます。
全六章に渡る長編ストーリーです、良ければ見て下さい。

第一章:いじめられっ子

 わたしはほなみ……。
 しょうがく1ねんせいなの…………。
 ……がっこうってつらい……、みんな……どうしてわたしをいじめるの…………?

「や〜い!! なきむしほなみ!!」
「な〜け、な〜け、ほ〜な〜み!!」
「ほなみのば〜か」

 み……みんなが私をいじめる…………。

「う……うえぇぇぇぇぇーーーーーん!!!」

 もうだめ……、わたしはがまんできなくてないちゃったの……。

「あははははは!! ほなみがないた〜〜〜!!!」
「おもしれぇぇぇ〜っ!! きゃははははは!!!」
「ほなみなかすと、おもしれーーーーーっ!!!」
「わああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーんっ!!!!!」

 ど……どうしてそんなにわたしをいじめるの……?
 わたし、こんなにつらいのに…………。
 ううう……も……もういやだよおぉぉぉぉぉ…………。

「こら!! お前等何やっているっ!!!」
「げっ!! せんせいだ!!」
「や……やっべ〜っ!!」
「に……にげろーーーーーっ!!!」

 そしてみんなはにげたの…………。

「ううう……ぐ……ぐすん…………ひ……ひっく…………」
「藤枝、大丈夫か?」
「ううううう……み……みんながいじめるよぉぉぉぉぉ…………」

 せんせいは、わたしをたすけてくれる…………。
 でも、わたしにはともだちがいないの…………。
 どうして? どうしてわたしだけがいじめられるの…………?
 わたしはこんなことが、まいにちつづいたの……つらいよぉ…………。


―― そして五年後 ――

 私は保奈美……、小学六年生…………。
 学校って辛い……、みんながいじめる…………。
 
「何だよこいつ、暗ぇなぁ…………」
「何とか言えよ、おい!!」
「へへっ、殴っちゃおうかな〜〜〜」
「…………」

 こ……怖いよぉ…………。
 み……みんなが怖い……、いつまで経ってもいじめるから…………。
 私には友達がいない……、先生だけが頼りなの…………。
 勉強も良くも無ければ悪くも無かった……、普通の女の子なのに、私…………。
 私はやっぱりいじめられていた…………。

「何だよこいつ、いい子ぶっちゃってよ!!」
「うわっ!! 汚ねぇっ!! 触んなよっ!!!」
「おい、こいつに構わない方がいいぜ、先生にチクられるからよ…………」
「そうだな……、こんな奴、ほっといて遊ぼうぜ!!」

 ……この子達は成績が悪い子達なの……。
 先生に怒られてばっかりで…………。

「何だよ藤枝、こんなの分からねーのかよ」
「バカだなぁ……、コイツ…………」
「落ちこぼれに構っているヒマは無いんだよ」

 ……この子達は成績が良い子達なの……、私をバカにしている…………。
 みんながいじめる……、いじめて楽しんでいる…………。
 学校って何……? いじめられる人とそうでない人が付き合う所なの…………?
 みんなは何だか楽しそう……、でも、私には分からない…………。
 どうして、どうして学校が楽しいの…………?
 私をいじめているからなの……?


―― そして一年後 ――

 私は保奈美、蓮美台付属学園に通っているの…………。
 でも小学生のみんながいる…………。

「あいつには構わない方がいいぜ、チクリ魔だからなー」
「そうか、確かにそう見えるな……」
「根暗ね〜、確かに…………」
「嫌だ嫌だ」

 小学生の時のみんなが私の事を悪く言う…………。
 私はまだいじめられている……、もう学校なんて嫌だよぉぉぉぉぉ…………。
 これからもまだ三年も……、辛いよぉ……辛いよおぉぉぉぉぉ…………。

「触んなよっ、バカ!!」
「あっち行け!!」
「こっち来るなよっ!!!」

 みんなが私に罵声を浴びせてくる…………。
 も……もう嫌だよおぉぉぉぉぉ…………。


―― そして一年後 ――

 私は相変わらずいじめれれている…………。

「ちょっとそこっ!! 何やっているのよっ!!!」

 ……え?
 先生じゃない人が…………?

「な……何だよっ!!」
「てめぇ!! 一年だなっ!! 先輩に対してなんて口の利き方しやがんだっ!!」
「な〜にが先輩ですかっ!! ただの弱いものいじめやっているバカじゃないのっ!!!」
「そ……そうです……、先輩のやる事ではありません…………」

 え…………?
 も……もう一人も私の事を庇ってくれるの…………?

「な……何だとっ!! このガキッ!!!」
「てめぇ!! ムカつくんだよっ!! 殴られたいのかゴルァ!!!」
「やれば? あっちで先生が見ているけど…………」
「んなっ!?」
「く……くそっ!! お……覚えていろっ!!!」

 私をいじめていた男の子達が逃げていった…………。

「大丈夫?」
「だ……大丈夫ですか…………?」
「あ……あの…………」

 こ……こんな事初めて…………。
 先生以外の人が私を守ってくれるなんて…………。
 気の強い子は黄色のツインテールの子、もう一人は青いショートヘアの子…………。

「あっ、あたしは渋垣茉理」
「わ……私は橘ちひろです、先輩…………」
「……わ……私は……ふ……藤枝保奈美…………」
「保奈美……、うん、保奈美さんと呼んでいい?」
「えっ……、う……うん…………」
「宜しくお願いします、藤枝先輩…………」

 この時、私は初めて友達が出来た…………。
 休み時間になったら、この子達と一緒にいる事にしたの。
 な……何……? こ……この気持ちは…………?
 こ……これが……これが……楽しい…………の…………?
 この子達と一緒にいると、今までとは違う感情が私に芽生えたの…………。

「ねぇ保奈美さん、ここ分からないんだけど…………」
「茉理ちゃん、うん、ここはこうすればいいの」

 私達は親しくなって、渋垣さんの事を「茉理ちゃん」と呼んでいるの。
 茉理ちゃんは「渋垣さん」では照れくさいって事でそう呼ぶようにしたの。

「へぇ……、保奈美さんに教わると本当に分かりやすい!!」
「藤枝先輩って、頭いいんですね…………」
「そ……そんな事…………」

 私は最近成績が上がってきたの…………。
 それは、この子達のお陰かも知れない…………。
 私と一緒に遊んでくれて……、楽しんで…………。
 私は最近学校に来るのが楽しくなってきたの…………。

「美味しいっ! これ!!」
「料理上手なんですね、藤枝先輩……」
「そ……それ程でも…………」
「保奈美さんっ!! 是非あたしにも料理教えて下さいっ!!!」
「わ……私もいいでしょうか…………」
「うん、いいわよ」

 私は元々料理が得意だったの……。
 小さい時から大好きだったの、そう、私の作った料理をお父さんとお母さんが食べて「美味しい」と言ってくれて…………。
 私はこの子達に料理を教えたの……、本当に楽しい。
 でも、変わってきた私に対して……他の人は…………。

「おい藤枝、お前最近カンニングしてねーか?」
「最近のテストの点、何か急に上がってきたもんね、絶対変だよ」
「てめぇ、一体どんな手を使ったんだぁ…………」
「…………」

 私は同級生からは相変わらずいじめられている…………。
 でもこの時……、私の中でまた、新しい感情が芽生えてきたの…………。
 この気持ちは……一体……何…………?

「おいっ!!」
「オラオラッ!! どうやってカンニングしたんだよっ!!!」
「白状しろよっ!! ゴルアアァァァッ!!!」
「…………」

 私はこの新しい感情が押さえられなくなって来た…………。
 そして…………。

「……うるさい…………」

 私は少し口に出た……、この感情は…………怒り…………?

「ああん!?」
「何か言ったかぁ、てめぇ!!」
「ゴルァッ!! もうイッペン言ってみろよっ!!!」

 私は……この新しい感情……、怒りを……、怒りを…………。

「うるさいわねぇっ!!!」

 私は生まれて初めて怒鳴った……、そう、この怒りが頂点に達した!!!

「んだとぉっ!!!」
「てめぇっ!! 俺達に歯向かうのかぁっ!!!」
「ゴルアアァァァァ!! 何だテメェ!! 急に怒鳴りやがってぇっ!!!」

 ……許せない…………、こいつ等だけは…………絶対に許せないっ!!!

「私がカンニングしたですってぇっ!! それじゃぁ何か証拠でもあるのっ!!!」
「な……何だとっ!!!」
「こ……このアマ!! な……何だよっ!!」
「ゴルアアァァァァァァ!!! テメェッ!! ぶち殺されてぇのかっ!!!」

 怖い……、でも……、それ以上に怒りがっ!!

「あなた達はずっと私をいじめてきたけど、そんなに楽しかったのかしらっ!!!」
「最低よっ!! 人を傷つけてっ!! 私を傷つけるしか能がないくせにっ!!!」
「あなた達なんて大っ嫌いっ!!! 最低よっ!!! 人を傷つけるしか出来ないあなた達なんてっ!!!」

 私はこの八年間の恨みを晴らすかのように、怒鳴った!!
 憎い……憎いっ!! こいつ等がっ!!!
 私は涙を流しながら怒鳴ったのっ!!!

「な……何だとぉっ!! こ……この野郎っ!!!」
「て……てめぇっ!! お……俺達が最低だとぉっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァ!!! もう許さねぇっ!!! 藤枝ぁっ!!! ぶっ殺してやるっぞゴルアアァァァァァァーーーーーッ!!!!!」

 バキッ!! ゴンッ!! ドカッ!! バシーーーーン!!!

「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!」

 私は袋叩きに遭った…………。
 でも……私の中の憎しみが更に大きくなったのっ!!!

「最低っ!! 最低よっ!!! 口で負けたら暴力なのっ!!! 人間じゃないわっ!!! あんた達なんかっ!!!!!」
「こ……この野郎っ!! ど……どこまでもふざけやがってぇっ!!!」
「ムカつくんだよぉっ!! オラオラァッ!!! 生意気なんだよっ!!! 藤枝のクセにっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァーーーーーーッ!!! 人間じゃなきゃ一体何だってんだよぉっ、ゴルアアァァァァァーーーーーーッ!!!!!」

 バキッ!! ゴンッ!! ドカッ!! バシーーーーン!! バッコーーーーーーーーーーーン!!!!!

「お前等っ!! 何やっているんだっ!!!」
「げっ!! せ……先生!?」
「いいっ!? い……いつの間にっ!?」
「げげげげげ!? や……ヤベェ……マジでヤベぇ…………」
「お前等っ!! 全員職員室に来いっ!!!」

 暴力使っていた男達は職員室に呼ばれた…………。
 私は保健室で手当てを受けた後、ベッドに横たわっていたの…………。
 保健室で私は今も含めた、八年間の事を全て先生に話したの…………。
 あの男達は全員停学処分になったの………。
 そしていじめっ子の親達が来て、そのいじめっ子に対して怒っていた……、そして私に謝って…………。
 先生が親に連絡したんでしょう……。

「保奈美さん!! 大丈夫!?」
「ふ……藤枝先輩!! だ……大丈夫ですか!?」
「ま……茉理ちゃんに、橘さん…………?」

 二人がお見舞いに来てくれた…………。
 私は嬉しかった……、こんな私の為に…………。

「まったくあいつ等、本当に最低ねっ!!!」
「そうです……、男の人が束になって藤枝先輩を袋叩きにして、酷いです…………」
「ヤバくなって来たから、あたし達が先生を呼んだのっ!!」

 え!?
 そ……そうだったの…………。
 私はこの時、友達が本当にかけがえの無い物だと思った…………。

「ありがとう、茉理ちゃんに橘さん」
「いえいえ当然ですよ、でも…………」
「すいません……、本当はあたそ達が直接止めれば良かったんですが…………」
「ううん……、茉理ちゃんや橘さんが直接止めようとしたら、返り討ちに遭うと思うから…………」
「対応が早かったから、この程度の怪我ならしばらく経てば治るわ、だから気にしないで…………」

 私はしばらく横になって、そして自分で歩けるようになったの…………。
 そして私達三人で仲良く帰ったの、雑談しながら…………。
 そして私は成績トップにまで上がったの……、そして体育でも優秀になったの…………。
 私にこれだけの素質があったなんて、自分でも信じられなかった……、私は優等生になってしまったの。
 私は女の子達に勉強を教えたりしたの……、女の子から人気者になってしまったの…………。
 自分でも本当に驚いた、私がこんな人気者になってしまうなんて…………。
 本当にありがとう……、茉理ちゃん、橘さん…………、全て貴方達のお陰よ…………。


〜 男性恐怖症編に続く 〜


第二章:男性恐怖症

―― そして保奈美三年生 ――

 私は三年生に進級した。
 私はすっかり明るくなった、そう、普通の生徒になれたの。
 去年から友達になった、茉理ちゃんと橘さんのお陰なの、色々助けてくれたから…………。
 そのお陰で私は優等生にまでなったの、学校へ来るのが楽しみになったの。

「保奈美さん! 一緒に帰ろう!!」
「藤枝先輩、一緒に行きましょう」
「うん」

 私達三人は毎日一緒に下校しているの。
 茉理ちゃんと橘さんが一番大好きだから…………。
 そして私が下駄箱を開けると…………。

 ドサドサッ!!

「きゃぁ!?」
「うわぁぁっ!? ま……また!?」
「す……凄いです…………」

 私の下駄箱の中には大量のラブレターが入っていた…………。
 そう、毎日毎日…………。
 内容は以下のがほとんどだった…………。

「ぼ……僕……実は藤枝さんの事が大好きなんです!! 付き合って下さいっ!!!」
「保奈美ちゃん、LOVE!!」
「デートして下さい!!」
「いじめてごめんなさいっ!! 本当は……本当は大好きだったんですっ!!!」

 でも、私はこれまでの八年間があったから、どうしても男の子と付き合う気になれなかったの…………。
 正直、男が怖かったの……、特に、あの時の集団暴力があったから…………。
 私はラブレターを全てごみ箱に捨てた…………。

「ねぇ保奈美さん、いいの? 全部捨てちゃって…………」
「うん……、この中に私をいじめていた人もいるし…………」
「藤枝先輩…………」

 そう、私は男性恐怖症になっていたの…………。
 男と付き合うなんて……、私はすっかりトラウマになっていたの…………。
 先生以外の男の人とは怖くて話が出来ないの…………。

「それもそうね、この野郎共、まったく調子がいいんだから…………」
「でも藤枝先輩は凄いです、それに比べて私なんて…………」
「ちひろ、大丈夫よ、ちひろにもいつかきっと素敵な恋人が出来るんだから」
「あたしが保障するわ、ちひろは誰よりも優しいし…………」
「うん、ありがとう、茉理」
「それにしても…………」

 な……何?
 茉理ちゃんが私の事をジロジロ見ている…………。

「はぁ、保奈美さんはいいなぁ……、そんなに胸が大きくて…………」
「そ……そんな、ま……茉理ちゃん…………」
「ま……茉理ちゃんもまだまだこれからよ、きっと大きくなれるわ」
「そうね……、これからの成長を祈るのみ」

 確かに私は胸が大きくなった…………。
 成績優秀で、料理上手な私はモテる対象になったの…………。
 でも……やっぱり男は怖い…………。

「ねぇ藤枝さん、男の人とは付き合ってないの?」
「保奈美はモテるからね〜、羨ましいわ〜〜〜」
「藤枝さんは美人だし、成績優秀だし、料理上手だし、まさに女の子の完璧超人だわ」
「そ……そんな…………」

 私の同級生の女の子友達が言い寄ってくる……でも…………。

「私……、男の人……怖いから…………」
「た……確かに八年もいじめられたんじゃぁねぇ…………」
「複雑よね〜〜〜」
「それにしても男達はバカよね〜、藤枝さんをいじめていたなんて、本当に……」

 そしてプールの時…………。

「おおっ!! あれ見ろよ!!!」
「うわ〜っ、藤枝、すげぇスタイルいい〜〜〜っ!!!」
「ああっ……保奈美ちゃ〜〜〜ん!!」

 うう……お……男達が私を見ている…………。
 は……恥ずかしいよぉ…………、それに……怖い…………。
 私は男達を無視して、女の子達と一緒に授業に集中した、そして自由時間も…………。
 そして下校時…………。

「ふぅ…………」
「保奈美さん、何か疲れているね…………」
「藤枝先輩……、最近どうしたんですか?」
「うん……実は…………」

 私は茉理ちゃんと橘さんにプールでの出来事を言ったの…………。

「やれやれ、本当にやーね男って、スケベなんだから」
「た……大変ですね、藤枝先輩…………」
「う……うん…………ってあっ!!」
「ど……どうたの保奈美さん……って、あ……あいつ等!?」

 そう、あの三人組は私を八年間一番いじめていて、生まれて初めてケンカした相手だった…………。
 全ての元凶……、そう、私に対するいじめは全てあの三人から始まったのっ!!!
 あの三人だけは絶対に近付きたく無かった…………。
 私達は気付かれない内に…………。

「ね……ねぇ、回り道しましょう……」
「そ……そうね」
「う……うん……」

 そして私達は遠回りして帰ったの…………。


〜 一方男達は 〜

「くそっ!! 何かムシャクシャするっ!!!」
「藤枝の奴っ!! ここの所いい気になりやがってっ!!!」
「それだけじゃねぇっ!! 受験受験って、ムカつくんだよっゴルァ!!!」
「本当だよな〜っ!! 勉強勉強って、うぜぇんだよっ!!!」
「ムカつくっ!! すげぇストレスが溜まるっ!!!」
「ゴルァ!! こう言う時は藤枝をいじめてストレス発散してたんだけどよぉグルァ!!!」

 そうである、人気者となった保奈美をやたらにいじめれば、たくさんの敵を作ることになるから出来ないのだ…………。


〜 そして保奈美視点 〜

 私は家に帰って、夜ご飯の時…………。

「保奈美、学校最近どうだ?」
「うん、とりあえず大丈夫よ、茉理ちゃんや橘さんもいるし……」

 お父さんが心配している……、そう、八年間もいじめられ続けたから…………。

「う〜ん、今度はその男性恐怖症を直さないとね…………」
「そ……それは…………」

 お母さんが私の男性恐怖症の事を気にしている…………。
 でも、こればっかりは直りそうもないわ…………。

「まったくあの連中はっ!! 今までワシの可愛い保奈美をいじめやがってっ!!!」
「ま……まぁまぁ、あなた、もう過ぎた事だし…………」
「保奈美っ!! 安心しろ!! ワシがいつまでも付いているからなっ!!!」
「あ……あはは」

 お……お父さんたら……も……もう…………クスクス…………。
 いくら男性恐怖症とは言っても、お父さんなら全然大丈夫。
 お父さんやお母さんとは楽しく話ししているわ。

「それにしても、全て茉理ちゃんと、ちひろちゃんのお陰じゃな」
「そうね……、保奈美を色々助けてくれたし」
「うん、私が平和になったのも全て茉理ちゃんと、橘さんのお陰よ」

 こうして家族で楽しく雑談したわ。
 そして私は、毎日の復習・予習を欠かせなかった…………。
 私も受験生だし……、うん、毎日ちゃんと勉強すれば蓮美台学園に入学出来るわ。
 そして次の日…………。

「あら? あれは?」

 何だろう? 男子生徒同士で何か口論?
 私は物陰に隠れる……って、あ……あの三人組!?
 そして対するのが他の五名の男?

「お前等が藤枝をいじめるから、男性恐怖症になったんだよっ!!!」
「どうしてくれるんだよっ!! 俺のラブレター受け取ってもらえないのも全てお前等のせいだっ!!!」
「そうだそうだっ!! 全てはお前等が始めた事だっ!!!」
「責任取れ!!」
「このバカ共めっ!!!」

 うう……、わ……わたしのせいで……け……ケンカ…………?

「うるせぇなっ!! お前等だって一緒になってやってただろうがっ!!!」
「そうだそうだっ!! 人の事言えるかっ!!!」
「ゴルアアァァァァァ!! テメェ等!! 全部俺達のせいにしやがってぇっ!!!」

 ううう……、こ……今度はイジメっ子達が……な……何か怖い…………。

「確かに否定しないさっ!! だがなぁっ!! 元々はお前等が最初に始めたからなんだよっ!!!」
「そうだそうだっ!! お前等が始めなけりゃ藤枝がっ!!!」
「保奈美ちゃんいじめは無かったんだよっ!!!」
「くっそぉっ!! お前等なんかと一緒にいたのが間違いだったよっ!!!」
「とにかくお前等三人とは絶交っ!! 村八分だっ!! 行こうぜっ!! ふんっ!!!」

 そしていじめっ子三人から、五人は立ち去った…………。
 まさか……、いつの間にこんな事が…………。
 私は気まずいので、気付かれない様に、立ち去った…………。
 そして下校時…………。

「うっわ〜っ、保奈美さん、そんな事がっ!?」
「な……何か凄い事になってますね……藤枝先輩…………」
「うん……、で……でも……何か……もっと男達が怖くなって来ちゃった…………」

 そう、あんなの見せられたら私も怖くなるわ…………。
 ううう……、男性恐怖症が酷くなっていく…………。

「はぁ……、醜い争いね、まったく…………」
「そ……そうですね…………はっ!?」
「ど……どうしたの橘さん……ってあれは!?」

 私達が見たのは例のいじめっ子三人組だった…………。
 私達は急いで物陰に隠れた!! しかも結構大きい声で何か言っているっ!!!

「くっそおぉぉぉぉぉっ!! ムカツクーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
「どいつもこいつも、俺達の事、バカにしやがってぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「ゴルアアァァァァァーーーッ!!! ちっくしょおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 ち……ちょっと…………、な……何て大きな声出しているの!?

「こうなったのも全部藤枝のせいだっ!!!」
「そうだそうだっ!! 藤枝の奴っ!! 全てはあの女が悪いっ!!!」
「ゴルアアァァァァァーーーーーッ!!! 保奈美の奴っ!! ぶち殺してえぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!!!」

 えええーーーーーっ!?
 な……何で私が…………!?

「ま……茉理ちゃん、橘さん、い……行こう」
「そ……そうね!」
「う……うんっ」

 私達は速攻でその場を立ち去った…………。
 見つかったら……何か……殺されそうだったから…………。

「な……なによアレ!! 完全に逆恨みじゃないっ!!!」
「そ……そうですっ!! 藤枝先輩は何も悪くありません!!」
「そうよっ!! 保奈美さんをいじめるから、そう言う事になるのよっ!!!」
「で……でも……、わ……私…………こ……怖い…………」
「ね……ねぇ……、先生に言った方がいいんじゃない…………?」
「で……でも……、私、まだ何もされていないし…………」
「茉理、そんな事しても逆効果で逆撫でするだけよ」
「そ……それもそうか…………」

 た……確かに橘さんの言う通りだわ…………。
 単に会話していただけ……、まだ何もされていない…………。
 仮に先生に言っても、あの三人の神経を逆撫でするだけだわ…………。
 そして次の日…………。

「あ〜あ、受験がどんどん近づいて来る〜〜〜!!!」
「ど……どうしよぅ〜〜!! これって、一生の問題だし…………」
「ねぇ藤枝さん、どうすればいいの?」
「藤枝さんなら、受験も心配無さそうだし……、いいなぁ……、そんなに勉強が出来て…………」

 友達の女の子達が受験の事で悩んでいる。
 私はこの女の子達の相談相手にもなっているの…………。

「う〜ん……、私は毎日復習・予習を欠かさずやっているだけなんだけど…………」

 私は普通に復習と予習を欠かさずやっているだけだから…………。

「それじゃぁさぁっ!! みんなで勉強会やろうよっ!!」
「そ……そうね!! それがいいわっ!!」
「ねぇ藤枝さん、勉強教えてくれるかな…………?」

 みんなが私に助けを求めている…………。
 三年生になってからは、この子達とも仲良くやっている…………。
 だから…………。

「うん、分かったわ」
「やったーーーーーっ!!」
「藤枝さんがいれば心強いわーーーーーっ!!!」
「じゃぁさ、じゃぁさ!! 早速やろうよ!!!」
「うん」

 そして私達は今後毎日勉強会する事にしたの……。
 みんなが私に聞いてくる……、そして私は答えて……、私が教えるとみんながすんなり理解してくれる。

「藤枝さんって、教えるのも上手ね」
「ほんとほんと、藤枝さんならいい先生になれるわ!!」
「保奈美ちゃん、助かるよ!!」
「ううん、みんなが頑張っているからよ」

 こうして毎日遅くまで勉強会をやっていた……、女の子のみだけど…………。
 ……あら? あれは?

「保奈美さん、お疲れ様」
「藤枝先輩、ご苦労さまです」
「ま……茉理ちゃんに、橘さん!? ま……待っててくれたの!?」
「それもあるけど……正確にはちひろの手伝いをやっていたけどね」
「私、お花を育てているんです」
「そ……そうなんだ」

 橘さんと茉理ちゃんがお花を育てていいたんだ…………。
 そう言えば、学校のお花がより綺麗になっていたわ…………。

「あのお花は橘さんと茉理ちゃんが育てていたんだね、綺麗だったよ」
「ま……まぁ、あたしはちひろの手伝いをやっているだけだし……」
「あ……ありがとうございます」
「それよりも保奈美さん、みんなに勉強教えていて大変そうじゃない」
「す……凄いです……藤枝先輩…………」
「仕方無いわ、だって、受験生だから…………」
「あ〜あ、あたし達も来年は受験かぁ……、嫌だなぁ…………」
「茉理、毎日復習・予習やっていれば大丈夫よ」
「で……でも……、あたしってば……、半分勉強嫌いだから、あ……あはは」

 そう言えば、茉理ちゃん達も来年は受験なんだ…………。

「茉理ちゃん、大丈夫よ、勉強なら私が教えてあげるから」
「ほ……本当に!?」
「うん、茉理ちゃんと橘さんは私の一番の恩人だもん」
「橘さんも、何か分からない事あったら聞いてもいいんだよ」
「あ……ありがとうございます…………」

 こうして私は女の子達と仲良くやっている…………。
 私達は受験が近づいている、でも私は大丈夫…………。
 私の友達達も合格できる事を祈りながら…………。


〜 運命の出会いへ続く 〜


第三章:運命の出会い

―― 10月 ――

 私は藤枝保奈美、今年もいよいよ後半に入った…………。
 私達は勉強会をしながら毎日を過ごしていた…………。
 でも、私の男性恐怖症は相変わらずだけど…………。

「ねぇねぇ、今日転入生が来るんだって」
「へぇ〜っ、男? 女?」
「何か、男らしいよ」
「そうなんだ…………」

 転入生の男の人……。
 い……一体どんな人なんだろう…………。
 ううう……怖い人だったら嫌だなぁ…………。
 そして担任の先生が来た…………。

「え〜っ、本日より新しい生徒が来る事になった」
「では、入ってきていいぞ」
「はい」

 そしてその転入生の男の人が入ってきて…………。
 「久住 直樹」と書いていた…………。

「久住直樹です、宜しくお願いします」

 ……よ……良かった…………。
 どうやら普通の男の人ね…………。

「そうだな……、久住の席は藤枝の隣がいいだろう」

 え!?
 わ……私の隣なの!?
 そして、久住君が私の隣に来る…………。

「宜しくな」
「う……うん…………」

 わ……私の隣に男の人がいる…………。
 ううう……な……何だか……緊張する…………。
 そして放課後…………。

「え〜っと藤枝さん……、出来ればでいいんだけど……学校内案内してくれないか? 来たばっかりで右も左も分からないし……」

 えええ〜っ!?
 ど……どうしよう…………。
 で……でも……、私もそろそろ……こ……この……男性恐怖症を治さないと…………。

「わ……分かった…………」
「ああ、頼むよ」

 私は久住君を案内する事にした…………。

「ふ……藤枝さん……、だ……大丈夫かしら…………?」
「う〜ん……、何だか心配…………」

 そして私は久住君を案内する…………。
 あら……あれは茉理ちゃんに橘さん。

「あっ、保奈美さん……って、な……直樹!?」
「おう、茉理か」

 えっ!?
 久住君と、茉理ちゃんって知り合いだったの…………?

「ねぇ直樹、保奈美さんをナンパなの?」
「ば……バカを言え!! ただ案内してもらっているだけだっ!!」
「ま……茉理……、そ……その人知っているの…………?」

 どうやら久住君の事を知っているのは茉理ちゃんだけみたい…………。

「直樹はね、あたしの親戚なの」
「茉理とは従妹だ、最近こっちに引っ越して来て」
「はぁ……、よりによって直樹がこっちに来るとはねぇ…………」
「お前も相変わらずのお転婆ぶりだな、茉理」
「な……なにおうっ!!」
「どーせ直樹の事だから、今日も遅刻したんじゃないの?」
「流石の俺でもそこまでやらねーよ」
「でも、直樹はねぼすけだから、これから遅刻の常習犯になったりして」
「茉理こそ、相変わらず胸が小さいな」
「な〜お〜き〜ぃ〜〜〜〜〜っ!!!!!」

 バッコーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

「ぐはぁっ!!」
「な……殴るなっ!! ま……まったくお前は……あ……相変わらずだなぁ…………」
「べ〜っだっ!! 直樹のバカッ!!!」

 な……何か二人共楽しそう…………。
 な……何だか……わ……私も…………。

「クスクスクス…………」
「や〜い、直樹、保奈美さんに笑われてやんの〜〜〜」
「お前のせいだろうがっ!!!」

 な……何か久住君って、お……面白い人ね……。
 こ……こんな男の人は初めてだわ…………。
 今までの男の人とは……何か違う…………。

「クス、でも二人共、仲が良くて……楽しそうです」
「ち……ちひろぉぉぉぉぉ」

 久住君が来て、私達は何だかより楽しくなって来たわ…………。
 そして学校の案内は、茉理ちゃんと橘さんも一緒にしてくれる事になったの…………。

「おい、何でお前までついてくるんだ?」
「決まっているでしょ、保奈美さんから直樹の毒牙から守る為よ」
「お……お前なぁ…………」
「でも、こうしてみんな一緒の方が楽しいです」
「そうね、茉理ちゃんと橘さんが一緒の方が楽しいわ」

 私達はこうして学校を一周りした…………。
 久住君と、茉理ちゃんはケンカしながらだったけど…………。
 でも、ケンカとは言っても、二人は何だか楽しそうだった…………。
 私も雑談したわ……、茉理ちゃんや橘さんはもちろん……そして……久住君とも…………。
 不思議だったわ……、私が男の人とこんなに話せるなんて…………。
 生まれて初めての、男の人との雑談をしたの……私…………。
 そして、勉強会の時…………。

「え〜っと、藤枝さん……ここ教えてくれないかなぁ…………」
「く……久住君!?」
「ま……まぁ……知り合いがまだ藤枝さんしかいないし…………」

 女だけの勉強会に男の久住君が入ってくる……?
 で……でも……久住くんなら……何とか大丈夫そう…………。

「うん、ここはね…………」

 私は久住君に勉強を教える…………。
 男の人に勉強を教えるのは初めて…………。

「う……うそっ!?」
「あ……あの藤枝さんが男の人と話している!?」
「えええええ〜っ、こ……これってどう言う事!?」

 みんなはびっくりしているみたい…………。
 でも、自分でも本当は驚いている…………。
 男性恐怖症の私が男の人に勉強を教えているなんて……、びっくりだわ…………。
 そして下校時……、私はいつもの通り茉理ちゃんと橘さんと一緒に帰る…………。
 そして……久住君も一緒に…………。

「ねぇ直樹、まさか保奈美さんに変な事していないでしょうねぇ…………」
「お……お前なぁ……、俺を一体何だと思ってやがる」
「茉理っ」
「ううん、久住君は私に勉強を教わっただけよ」
「えええっ!? ほ……保奈美さん!? 直樹に勉強を教えたの!?」
「おい茉理、何をそんなに驚いている」
「だ……だって!! 保奈美さんは男性恐怖症なのよ!!!」
「そ……それなのにっ!! ほ……保奈美さん!! も……もしかして治ったの!?」
「ふ……藤枝先輩…………?」
「え……ええっと…………」

 私は良く分からなかった…………。
 確かに、久住君だけとは不思議と話せる…………。
 な……何でだろう…………?

「おい茉理、藤枝さんが男性恐怖症って一体どう言うことだ?」
「あっそうか、直樹は知らないもんね」

 私達は、私が八年間男からいじめられた事を久住君に話したの。
 小学生の時からずっといじめられて、そして去年から茉理ちゃんと橘さんと出会って…………。
 女の子とは仲良くなれたんだけど、未だに男を恐れている事も…………。

「成る程、まったくどうかしてるぜ!! 藤枝さんをそんなにいじめていたなんてっ!!!」
「本当よねぇっ!! まったく……あの時の男共はっ!!!」
「でも、今はいじめられていないんです」
「そうか……、今まで辛い事あったんだな……藤枝さん…………」
「うん……」
「それじゃぁ、俺も気をつけないとな、そうとも知らずに気安く話し掛けちゃって…………」
「ううん、大丈夫」
「何か久住君なら話せそう……、だから……大丈夫だから…………」
「そ……そうか」
「久住君って、茉理ちゃんと仲良さそうだし、楽しそうに話しているし……、だから…………」
「た……楽しそう……って…………、ま……まぁ否定しないけど…………」
「クスッ、茉理も久住先輩がいて、何だか楽しそうだし」
「ちひろ〜〜〜!!」

 こうして私達は雑談しながら下校していたの…………。
 ……って、あ……あれはっ!!!

「ね……ねぇ……、回り道しない…………?」
「どうしたの、保奈美さん……って、ああ……成る程…………」
「どうしたんだ、藤枝さん?」
「ほら、直樹もこっち」
「?」

 例のいじめっ子三人衆がいたの…………。
 そして私達は、久住君にその事を話したの…………。

「成る程……、奴等が藤枝さんをいじめていた元凶か…………」
「そうなのよっ!! 去年なんか保奈美さんをリンチした時だってあったしっ!!!」
「だから私は、あの三人には関わらない事にしているの…………」
「あの人達、藤枝先輩に逆恨みしているみたいで、怖いし……」
「逆恨み?」
「そうそう、この間なんか『保奈美の奴っ!! ぶち殺してえぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!』とか騒いでいた時もあったのよ」
「あれは完全に逆恨みです、藤枝先輩は何も悪くありません」
「成る程……、もしかしたら藤枝さんが奴等に襲われる可能性があると…………」
「うん……だから私、あの人達怖いの…………」
「そうだな、奴等には関わらない方がいいだろう…………」

 あの三人とだけは、とても仲良くなれる気がしなかった…………。
 久住君以外の男の人も、あの人達みたいには怖くない……。
 そう、あの三人はまるで不良みたいに…………。
 あの三人とは同じクラスだけど、私はとにかく避けていたわ…………。
 今年になって、あの三人の私に対する罵声が酷くなったの、影で…………。
 更に今年は受験生、だからよりストレスが溜まっているんだわ…………。


―― 11月 ――

 久住君が転入して一ヶ月…………。
 私はすっかり久住君と友達として話せるようになったの…………。

「藤枝さん、ここを教えてくれ!!」
「ここは、どうすればいいかなぁ…………」

 最近、男の人も私に聞いてくる……、受験が近づいていて来たから必死なんだろう……。

「うん、ここはね…………」

 私は久住君以外の男の人と、勉強を教えるぐらいなら話せるようになった……。
 久住君のお陰ね、男の人と少しでも話出来るようになったのも…………。
 久住君と話していると本当に楽しい、だから少し男の人に慣れて来たかな…………?
 私達の勉強会は、男の人も少し混ざって人数が多くなって来た…………。
 そして下校時、私は久住君と茉理ちゃんと橘さんと一緒に…………。

「保奈美さん、段々男性恐怖症が治ってきたわね」
「そ……そうかしら…………?」
「ええ、あの勉強会で男の人もまざっていましたから…………」
「藤枝さんが勇気を出したからさ、これも」
「そ……そんな……、み……みんなが優しいから…………」

 実際、私に聞いてくる男の人達も、私の説明を一生懸命聞いてくれる。
 そしてお礼もきちんと言ってくれる……、だから少しずつ…………。

「けっ!! 何でぇ何でえぇぇぇぇぇっ!!!」
「な……何だ!?」

 あ……あれは例のいじめっ子三人衆!?
 私達は急いで物陰に隠れたの……、彼等は後ろ向きだったから、私達に気付いていないけど…………。

「くっそおぉぉぉぉぉっ!!! ムカツクぜえぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「受験だからって、更に俺達の遊びを色々制限しやがってぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「クソババァにクソジジィめっ!! 勉強勉強ってうっせぇんだよっ!!!!!」

 ……どうやら受験の事で頭に来ているみたい…………。
 も……もう、完全に不良よ……、あれは…………。

「くっそおぉぉぉぉぉっ!! 誰かをイジメねぇと、気が済まねえぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「あん時は、藤枝いじめて楽しんでいたけでよおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!!!」
「グルアアァァァァァーーーーーッ!!! 何もかもムカツクぜゴルアアァァァァァーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 うう……な……なんかどんどんエスカレートしていくわ……。

「な……何だあいつ等、藤枝さんをいじめて楽しんでいただとっ!! 外道だな…………」
「ほ……本当よね…………」

 うっ、まだ何か言っている…………。

「それによおぉぉぉぉぉっ!! どいつもコイツも俺達を生ゴミを見るような目で見やがってっ!!!」
「くっそおおおぉぉぉぉぉっ!! こうなったのも全部藤枝が悪いっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァーーーーーッ!!! 逝かしてやるかああぁぁぁぁっ!! 保奈美ィィィぃぃーーーーーーっ!!!!!」

 そ……そんなぁ…………。
 ひ……酷い…………、あ……あなた達が私をいじめていたからじゃないっ!!!

「逆恨みだな、本当に最低な奴等だ……」
「本当よね、だったら最初っから保奈美さんをいじめるなってのよっ!!」
「そ……そうです……、いじめなんて人間最低な事です…………」

 あ……あそこまで言われたら本当に近づけないわ…………。
 あ……あの三人だけは……、要注意だわ…………。


―― 12月 ――

 世間ではクリスマスで楽しい月…………。
 でも、私達受験生にとってはそれ程喜べる物じゃなかった…………。
 何故なら受験が迫って来ているからなの…………。
 みんな、ピリピリして来ているわ……、私も……つられて多少…………。

「ふぅ…………」

 今日の勉強会も終わった…………。
 私はみんなに勉強教えていて、疲れていた…………。

「お疲れ様、保奈美」
「あっ、ありがとう直樹君」

 私達はあれから親しくなって、私は名前で呼ぶ様になったの…………。
 そして私に対する呼び方も名前で呼んでくれたほうが……何となくうれしいから…………。
 直樹君は、私にジュースを持ってきてくれたの。

「それにしても、この勉強会も随分数が増えてきた物だ」
「そうね……、来年は受験だから…………」

 そう、受験が迫って来ている…………。
 受験に対する危機感を抱く人がどんどん増えていく…………。

「保奈美もだんだん男性恐怖症が無くなって来て良かったな」
「そ……そうね…………」

 そう、もう割と誰でも話せるようになって来たの…………。
 ただ……あの三人だけは未だに避けているけど……。

「んだとぉっ!! 生意気なんだよっ!! てめぇっ!!!」

 な……何!?
 あ……あれは茉理ちゃん!? そして対するのは……あの三人組っ!?

「何よっ!! あたしは当たり前の事言っただけでしょーがっ!!!」
「そ……そうです…………」

 ま……茉理ちゃん……、け……ケンカしているの!?

「ムカつくんだよっ!! とにかくムカつくんだよっ!!!」
「テメー等は受験生じゃねぇから、俺達の苦しみ分からねぇんだよっ!!!」
「ゴルアアァァァァ!! 俺達が何やろうと勝手だろうがっ!! ゴルアアァァァァァァ!!!!!」

 ま……まずいよ…………。
 あ……あの三人は女の子にも平気で暴力振るうような連中なのよっ!!!

「だ……だからって、机をあんな事をする必要無いじゃないのよっ!!!」

 えっ!? つ……机…………?
 私はすぐそばの……、茉理ちゃんの教室を見た!!
 な……何コレっ!? この教室の机が全部倒されて、机の中も飛び出ていて凄い散らかっているわっ!!!

「あっ!! あれは藤枝保奈美っ!!!」
「えっ!? ほ……保奈美さん!! それに直樹も!!!」

 私と直樹君が奴等に見つかった!!
 そして連中は私達を見つけると…………。

「ケッ!! チクリ魔保奈美かよっ!!!」
「センコー呼ばれる前に逃げるぞっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァ!!! 保奈美ぃっ!! いつか復讐してやるからなぁっ、ゴルアアァァァァァァ!!!!!」

 あの連中は逃げていった…………。
 そ……それにしても、茉理ちゃんの教室が凄い有様だわ…………。

「何よあいつ等!! 本当に最低っ!! 八つ当たりの為にあたしたちの教室をっ!!!」
「わ……私のも…………」
「酷いなこれは……、一応先生に言った方がいいだろう…………」
「そ……そうね…………」

 これだけの事をすれば、いくら何でも黙っている訳には行かなかった…………。
 私達は事情を先生に話し、そして先生達と私達が片付けやったの…………。

「ありがとう、君達……」
「うん、これを見過ごす訳には行かないから…………」
「あたし達の教室だもん、あたしもやらないとね…………」
「あの連中に関しては私達に任せて、君達はもう帰りなさい」
「は……はい…………」

 そして私達四人で下校していた…………。

「それにしてもあいつ等、どんどんエスカレートしていくな…………」
「本当に最低っ!! あたしの机までひっくり返されてっ!!!」
「わ……私のも倒されていました…………」
「本当に酷いね…………」

 その後、例の三人組は職員室に呼ばれて厳重注意を受けたの…………。
 そして次の日…………こ……こっちに来た!?

「流石はチクリ魔保奈美、やってくれたな…………」
「変わってねぇな、所詮テメーは…………」
「この猫かぶりが、ゴルァ!!」

 ううう……ま……まさか……い……いじめる気なの…………?

「お前等っ!! 怒られて当然だろう!!!」
「保奈美はチクリ魔なんかじゃねぇっ!! 見つけたのが俺でも先生に言っているぞ、あれは!!!」

 な……直樹君が私を庇ってくれる…………?

「んだとぉっ!! このヨソ者がぁぁぁっ!!!」
「途中から入ってきたクセに、生意気なんだよっ!!!」
「ゴルアアァァァァァ!!! てめぇっ!! 保奈美の味方すんのかよっ!!!」

 や……やっぱり酷い事言う、最低だわ……、この人達…………。

「味方も何も悪いのはお前等だろ、茉理の教室をメチャメチャにしやがってっ!!!」
「保奈美に手を出すなら、俺だってチクリ魔やったっていいんだぞ!!」

 な……直樹君…………。

「ちぃっ!!」
「く……くそっ!!」
「ゴルアアァァァァ!! いつか復讐してやるからなっ!!!」

 そして三人は自分の席に戻ったの…………。

「あ……ありがとう、直樹君…………」
「当然のことをやっただけさ、奴等は所詮小物さ…………」
「直樹君…………」

 そして今日は直樹君と一緒に下校する事にしたの…………。
 茉理ちゃんと橘さんは、買い物があると言う事で先に帰ったの…………。

「今日は本当にありがとう、直樹君…………」
「ああ、あれは放っておけるレベルじゃないからな…………」
「まぁ……、何かあったら俺も相談になるよ、保奈美…………」
「な……直樹君…………」

 直樹君、本当にいい人…………。
 …………何か少し呼びずらくなってきたわ…………、よし。

「ねぇ直樹君」
「何だい、保奈美」
「直樹君の事を『なおくん』って呼んでいい?」
「ど……どうしたんだ、保奈美…………」
「うん……、何か……、なおくんの方が呼びやすくていいな……と……思ったんだけど…………」
「だ……駄目かなぁ…………や……やっぱり…………」
「う〜ん…………」

 直樹君は悩んでいる……、へ……変かなぁ、やっぱり…………。

「まぁ、保奈美がそう言いたいなら、好きにしろ」
「本当に!?」

 ああっ、良かった!! これで直樹君の事呼びやすくなるわ!!

「それじゃぁなおくん、これからも宜しくね」
「ああ、こちらこそ」

 こうして、保奈美と直樹の仲がさらに深まったのであった…………。


〜 受験編に続く 〜


第四章:受験

―― 受験当日 ――

 私は藤枝保奈美…………。
 今、蓮美台学園の受験テストを受けているの…………。
 予習・復習をやってきた私にとっては簡単な問題だった…………。
 でも、心配なのは他のみんな…………。
 そしてなおくん……、なおくんは大丈夫かなぁ…………?
 そして全教科終わって…………。

「なおくん、どうだった?」
「まぁ、ぼちぼちだったかな…………?」
「もう! ちゃんと散々教えたでしょっ!!」
「冗談冗談、みんな調子良かったよ」
「もう、なおくんたら…………」

 私はなおくんと一緒に試験会場から帰ったの…………。
 あっ、茉理ちゃんと橘さんだ!!

「保奈美さん、お疲れ様」
「お疲れ様です、藤枝先輩…………」
「おい、俺は?」
「はいはい……、お疲れ様、直樹」
「す……すいません……、く……久住先輩もお疲れ様でした…………」
「あっ、いいよ、ちひろちゃん…………」
「むむっ!! な……何であたしだけっ!!!」

 こんな感じでいつもの雑談やっていたの…………。

「保奈美さんは大丈夫だとして、直樹はどうだったのさ」
「保奈美のお陰で問題無かったよ、とりあえず落ちる事は無いと思うけどな…………」
「保奈美さんに散々教わって、落ちたなんて言ったらぶっとばすからね」
「はいはい…………」
「ま……茉理!!」

 もう、茉理ちゃんたら…………。
 そして合格発表の日…………。

「あっなおくん!! 私のがあったよ!!!」
「まぁ、当然と言えば当然だな、保奈美だからな」
「そして、なおくんは…………?」
「え〜っと…………」

 私はなおくんの受験番号も探す…………。
 う〜ん、どこにあるんだろう…………?

「無い…………」
「え!?」
「お……俺の番号だけ……と……飛んでいる…………」
「ええっ!? そ……そんな!?」

 そ……そんなっ!?
 な……なおくんが不合格!?
 そ……そんな…………、あ……あれだけ一生懸命やったのに……そ……そんな…………。

「う・そ・っ」
「え!?」
「冗談冗談、あそこ見ろよ保奈美」
「え・えっ!?」 

 私はなおくんの指差した先を見てみた…………。
 あ……あれはっ、な……なおくんの番号だっ!!!
 と……と言う事は、なおくんも合格したんだっ!!!
 よ……良かった…………って!!!

「な〜お〜く〜〜〜ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「あははははは!! 保奈美、ここまで完璧に騙されるなんてな、あははははは!!!」
「こぉ〜らぁ〜〜〜〜〜っ!!!」
「ははははは!! 追いついてみろよ!! 保奈美っ!!!」
「私から逃げられると思っているの〜〜〜っ!!!」

 私は全速でなおくんを追いかけるっ!!!
 そして……捕まえたっ!!!

「ほ……保奈美…………、お……お前、足速いな…………」
「さぁて、どうしてくれようかしら」
「ほ……保奈美……、フルーツパフェおごってやるから勘弁してくれ!!」
「うふふふ、そうね、今回だけはそれで許してあげる」

 私達は喫茶店で食事したの…………。
 なおくんは、フルーツパフェをおごってくれたの…………。
 うふふふ、何か楽しい。

「ありがとう、なおくん」
「ど……どういたしまして…………」
(お……おこずかい、ひ……火の車かも…………)

 そ……そう言えば他のみんなはどうだったのかしら…………。
 ほとんどの人が蓮美台高校の入試を受けていたから…………。

「藤枝さんっ!! 今までありがとうっ!! 私、受かったわっ!!!」
「あたしもよっ!! ありがとう保奈美!!」
「俺もだっ!! サンキュー、藤枝っ!!」
「私は……ここへは受からなかったけど……、滑り止めの私立には受かったわ!!」

 ほとんどの人が合格したみたい。
 良かったね、みんな…………。
 あっ、茉理ちゃんに橘さんだ!!

「保奈美さん!! 聞くまでも無いと思うんだけど、どうだった?」
「うん、私もなおくんも合格したわよ」
「よ……良かったです、藤枝先輩に久住先輩!!」
「や……やったじゃないっ!! 二人共!!」

 私達の合格を祝ってくれている…………。
 合格出来たのも、全ては貴方達二人のお陰よ。

「ありがとう、茉理ちゃん、橘さん…………」
「いえいえ、あたしも保奈美さんのお陰で成績が随分上がったわよっ!!!」
「わ……私もです……藤枝先輩、ありがとうございました…………」
「そう、良かったわね」

 私のお陰で茉理ちゃんと橘さんの成績が上がった事は本当に嬉しかった…………。
 これで恩返し出来たと感じて、本当に嬉しかった…………。
 そして、蓮美台学園でなおくんと一緒に…………。

「はい、出来たわよ〜」
「おおっ!! 保奈美、これは凄いな!!」
「えへ、あたしも手伝ったんだよ」
「私も手伝いました…………」

 蓮美台付属学園で、合格祝いを行なったの。
 茉理やちひろちゃんや、料理部の女の子達が手伝ってくれたの。
 みんなのお陰で凄い料理になったわ。

「これ、藤枝さんに教わりながら作ったの」
「藤枝さんって、料理凄い上手なのっ!!」
「保奈美ちゃんが料理長よ、みんなで食べましょ!!!」

 そしてみんなで合格祝いの料理を食べたの、良かった、みんな美味しそうに食べている!!
 ああ、生きていて良かった……、あのいじめられていた時は自殺も考えていたけど…………。
 ほ……本当に……生きていて良かった…………。

「うん、うまいよ保奈美」
「どんどん食べてね、なおくん」
「直樹、あたしのは?」
「茉理3点」
「な……なんであたしだけっ!!!」
「冗談冗談、美味しいよ茉理」
「な〜お〜き〜ぃ〜っ!!」
「もう、なおくんたら…………」
「もう、久住先輩ったら…………」

 もう……、なおくんたら……、茉理ちゃんをからかって…………。
 この日は、みんなで騒いで、楽しい合格祝いになったわ…………。
 そして、合格祝いが終わって、夜に四人で下校していたの…………。

「いや〜っ、お腹満腹満腹、ごちそうさまでした」
「お粗末様でした、なおくん」
「お粗末様、なおくん」
「茉理3点」
「ま……またあたしだけ何でっ! 直樹っ!!!」
「茉理に『なおくん』は似合わん」
「なにおうっ!!」
「も……もう、久住先輩ったら…………」
「やれやれ…………」

 もう、なおくんたら、また茉理ちゃんをからかって…………。
 でも楽しいな、本当に。

「でも、私が幸せになれたのも、茉理ちゃん、橘さん、そしてなおくん…………」
「本当にありがとう……、本当に…………」
「い……いやだなぁ…………、あ……あたしは当然の事をしただけで…………」
「ううん、でもあの時、茉理ちゃん達が私を助けてくれた事が幸せの始まりだったの…………」
「ほ……保奈美さん…………」
「藤枝先輩…………」
「保奈美…………」

 そう、この人達がいたから今の私がいる…………。
 私はお父さんとお母さんと先生しか信じられなかった…………。
 茉理ちゃんと、橘さんが友達の大切さを教えてくれて…………。
 そしてなおくんが、男の優しさを教えてくれたの…………。

「ほんとうに……ありがとう……みんな…………」

 こうして本当の幸せを手に入れた保奈美だった…………。


―― その一方で ――

「ちっくしょおぉぉぉぉぉっ!!! 全部落ちたぁぁぁっ!!!」
「ムカつくんだよっ!! くそっ!! 俺は藤枝なんかよりも頭が良かったのによっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァーーーーッ!!! 何もかもぶち壊してぇぇぇぇぇぜぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「くそおぉぉぉぉぉっ!! これじゃぁ帰れねえぇぇぇぇぇっ!!!」
「あのクソジジィにクソババァッ!! 俺達を散々叱咤するに決まっているさっ!!!」
「ゴルアアァァァァァーーーーーッ!!!!! 絶対……絶対許さねぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

〜 間 〜

「藤枝ぁっ!! こうなったのも全部テメェのせいだぁっ!!!」
「そうだっ!! 全部藤枝が悪いんだっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァーーーーーッ!!! 保奈美ぃぃぃぃぃっ!!! ゼッテー許せねぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「こうなったら……、こうなったらっ!! 藤枝に復讐してやるぜっ!!!」
「そうだっ!! あの女をとことんボロボロにしてやるっ!!!」
「保奈美ぃぃぃぃぃっ!!! 今度こそ、今度こそっ!! マジで逝かしてやるぜぇぇぇぇ!! ゴルアアァァァァァァ!!!!!」


〜 最終決戦に続く 〜


第五章:最終決戦!!

 私は藤枝保奈美、蓮美台付属生三年生。
 私は、蓮美台学園の試験に合格した。
 そして、私の親友なおくんも合格したの。
 私達はもうすぐ付属生を卒業するの……。

「あ〜あ、保奈美さんが卒業かぁ……、寂しくなるねぇ…………」
「ま……茉理ちゃん、が……学校が別になるだけよ」
「そうよ茉理、藤枝先輩と二度と会えなくなる訳じゃないだから」
「そうだぞ茉理、お前も来年試験合格すればまた一緒の学校にいられるんだからよ」
「よよよ、保奈美さん……、卒業してもあたしの事、忘れないでね」
「ま……茉理ちゃん……、な……何か違う…………」
「オーバーな…………」

 茉理ちゃんは、私と別の学校になるのが寂しいみたい…………。
 でも、私も少しさみしくなるな……、茉理ちゃんと別の学校になるから…………。
 でも、なおくんが一緒にいてくれる…………。

「直樹っ!! あたしがいない事をいい事に保奈美さんを毒牙に掛けたら滅ぼすからねっ!!!」
「さぁ、どうだか」
「な〜お〜き〜〜〜ぃ〜〜〜〜〜っ!!!!!」

 も……もう、なおくんたら、茉理ちゃんをからかって…………。
 そしてこの日は私は一人で下校していた…………。
 茉理ちゃんと橘さんは買い物、そしてなおくんも急ぎの用事とかで先に帰ってしまった…………。
 この日はちょっと寂しい下校になった…………ってあれは!?

「へっへっへ……、藤枝ぁぁぁぁぁ…………」
「ツラ貸せや、藤枝ぁっ」
「逃がさねぇぜ、へっへっへ…………」

 な……何!?
 わ……私を……ま……待ち伏せ!?
 このいじめっ子三人衆……、ま……まさか…………!?

「オラッ!! 来いよぉっ!!!」
「きゃあぁっ!?」
「オラァッ!! こっちに来やがれっ!!!」
「ゴルアアァァァッ!!! この時を待っていたんだぁっ!!!」
「は……離してっ!! 離してよおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!!!」


―― 最終決戦 ――

 私はいきなり人通りの無いビルに連れて行かれたの…………。
 そう、私をいじめていた元凶達が…………。
 私は忘れていたわ……、そう……、私の幸せを奪う者の存在を…………。

「へっへっへ…………、さぁて、どうしてくれようかなぁ…………」
「ここなら助けを呼んでも無駄だしなぁ…………」
「ボロボロにしてやるからな、覚悟しておけよ…………」

 な……何て奴等なのっ!?

「あなた達っ!! 私をどうする気なのよっ!!!」

 嫌な顔……、この三人の表情に私は憎悪を感じる…………。

「決まっているさ、復讐だよ、復讐…………」
「二年間も俺達を虐げたテメェに対するな」
「ゴルアアァァァァァ!!! テメーだけ幸せになりやがってよぉっ!!!!!」

 私が虐げた……? な……何言っているの……? こ……この人達…………?

「私が何したって言うの!? 被害に遭っているのは私の方なのよっ!!!」
「八年間も私をいじめてっ!! どこまで私をいじめれば気が済むのよっ!!!!!」

 訳が分からない…………。
 ただ分かるのは……、八年間、こいつ等によって私が不幸になった事だけっ!!!

「ヘッ!! 何かあれば先公にチクリやがってよぉっ!! テメーだって俺達に危害を加えていたんだよっ!!!」
「そうだっ!! 特に去年から散々だっ!!!」
「ゴルアアァァァァァッ!!! テメーのせいで俺達はなぁっ!! みんなからゴミみてーに見られていたんだよっ!!!!!」

 何を馬鹿な……、悪いのはあなた達じゃないっ!!!

「私をいじめたからいけないんでしょっ!! 先生に怒られたのだってっ!!!」
「当たり前じゃないっ!! 悪い事すれば怒られるのはっ!!!」
「るせぇんだよっ、オラッ!!!」

 バキィィィィィーーーーーッ!!!

「きゃあっ!?」

 い……いきなり殴られた……、酷い……、酷いよぉっ!!!

「生意気なんだよっ!! 泣き虫藤枝のクセによぉっ!!!」
「しばらく話していないうちに、随分と生意気になったなぁ、藤枝ぁ〜っ…………」
「ゴルアアァァァァァッ!!! 保奈美ィィィィィッ!!!!!」

 ドカアアァァァァァーーーーーーーッ!!!!!

「きゃああぁぁぁっ!!!」

 こ……今度は思いっきり蹴られた…………。
 ま……まさか……、まさかまた……私をリンチする気なの!?

「おらっ!! 泣けよぉっ!!!」

 バキィィィッ!!!

「あの時みたいに、泣き叫べっ!!!」

 バッシーーーーーーーン!!!!!

「ゴルアアァァァァァーーーーーッ!!! 保奈美ィィィィィーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 ドカアアァァァァァーーーーーーーッ!!!!!

「きゃああぁぁぁっ!!!」

 ううう……、こ……こいつ等…………。
 わ……私を泣かす気なのね…………。
 だ……だったら…………っ!!

「……泣くもんか…………」
「何だぁ?」
「おーおー、泣くかぁぁぁぁぁ…………」
「へっへっへ……、久々の泣き虫保奈美だあぁぁぁぁぁっ!!!」

 ……負けてたまるもんですか……、負けるもんかっ!!!
 私は……私はっ!! 泣き虫から卒業するっ!!!

「私はもう泣かないっ!!!」
「あなた達にもう負けるもんかっ!!! もう泣かされるもんですかぁーーーーーっ!!!!!」

 私は三人を睨むっ!!!
 もう私は『泣き虫ほなみん』じゃないっ!!!

「な……何だとぉぉぉぉぉっ……、な……生意気なあぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「く……クッソーーーーーッ!!! ふ……ふざけやがってぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「も……もう許さねぇっ!!! ぶっ殺してやるぜぇぇぇぇぇっ!!! 保奈美ィぃぃぃぃーーーーーーっ!!!!!」

 バキッ!! ベキッ!! ガンッ!! バシィィッ!! グシャアァァァァァッ!!!!!

 ……私は何度も殴られ、蹴られ、踏まれて…………。
 で……でも泣くもんかっ!!! 私は……、私はっ!! もう、弱虫なんかじゃないっ!!!!!

「ううううう……、わ……私は…………私は…………な……泣く……も……もんですかっ…………」
「ぜぇ……ぜぇ……、な……何だコイツは…………」
「あ……あれだけの攻撃を喰らいながら、まだコイツはっ!!!」
「て……てめぇっ!! そ……それが俺達に対する反抗かっ、ゴルアアァァァァァッ!!!!!」

 ……そうよ…………。
 普通の女の子の私じゃぁ、殴り合いでは勝ち目無い…………。
 だから……だからっ!! 心でっ、心でっ、私は戦うのっ!!!

「あ……あなた達がいくら私を殴ろうか、蹴ろうが、踏もうが、絶対に泣くもんですかっ!!!」
「あなた達だけは絶対許さないっ!!! だからっ!!! 私は絶対に負けないっ!!!!!」

 私は立ち上がる…………。
 そう……、立ち上がる事で、私の闘争心を示すのよっ!!!

「ねぇ、教えてよ…………」
「な……何だぁっ!?」

 私は凄い声で男に話しかける…………。
 男達は少し後ずさった……、そう、気迫で男達を押しかえすっ!!!

「何で私をそこまでいじめるかなぁ〜〜〜?」
「ん……んだとぉっ!!!」
「ねぇ、教えてよ、何で私をここまでしていじめるのっ!!!」
「答えてよっ!!! 何であなた達はそうまでして私をいじめるのよっ!!!!!」

 私がこれだけの怒りをぶつけるのは生まれて初めてっ!!!
 憎いっ!! 私をいじめるこいつ等が憎いっ!!!
 聞き出してやるっ!! 八年間も私をいじめた訳をっ!!!

「気分転換さ」
「な……何ですってぇっ!?」

 き……気分転換!?
 そ……それだけの事で私を散々あんな目にっ!?

「俺達はなぁっ!! 親から勉強勉強って散々言われて来たんだよっ!!!」
「そうだぁっ!! 遊ぶ事も許されずっ!! 邪魔されてっ!! ムカついてたんだよっ!!!」
「ゴルアアァァァァァッ!!! 俺達に自由なんて無かったんだよっ!!!!!」
「だから藤枝っ!! 一番の泣き虫のテメーをいじめて気晴らししていたんだよっ!!!」
「そうだっ!! テメーをいじめて泣かすのが俺達唯一の遊びだったんだよっ!!!」
「ゴルアアアァァァァァーーーーーッ!!! それなによっ!! テメーは親と一緒に楽しそうにしてよぉっ!! ムカつくんだよっ!!!」
「そうだっ!! 親から愛されなかった俺達の気持ちなんか分かってたまるかよっ!!!」
「親と一緒に遊園地行ったり、色々遊んでいてよっ!! 幸せそうなテメーが気に食わなかったんだよっ!!!」
「ゴルアアァァァァァァッ!!! うめぇ物をうまそうに食べやがってよおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!!!!」
「俺達は外食なんか一回もした事ねぇんだよっ!!!」
「そうだっ!! 全ての時間を勉強に費やされたんだよっ!!!」
「自由なテメーが許せなかったっ!!! だからテメーをいじめて楽しんでいたんだよっ、ゴルアアァァァァァ!!!!!」

 と……と言う事は…………。
 わ……私は単なる気晴らしの道具でしか無かったって事だったの…………?
 自分が……いくら親が勉強を強要しただけの事で…………。
 こ……これって……、か……完全に逆恨みじゃないっ!!!!!

「……最低…………」
「な……何だとぉっ!!!」

 確かに親から勉強を強要されて不愉快になるのは分かる……。
 でも……、原因を作ったのは私じゃないっ!! やっぱり悪いのはあんた達よっ!!!!!

「あんた達なんて最低よっ!!!」
「完全に逆恨みじゃないのよっ!!! しかも人を気晴らしの道具にしてっ!!!」
「勉強を強要させられたと言っても、私は全然関係無いじゃないっ!!!」
「私は関係無いじゃないのよっ!! いくらあなた達がムカつこうが、原因を作ったのは私じゃないっ!!!!!」
「だったらっ!! 何で正々堂々と自分の親と戦わなかったのよっ!!!!!」
「うるせえぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 バッキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」

 ま……また殴られた……、でも……私は……泣かないっ!!!!!

「親に逆らえば、俺達は何も出来なかったんだよっ!!!」
「そうだっ!! 勉強をサボればメシ抜きにされた時もあったんだよっ!!!」
「しかも、贅沢するなとか言って、まずいメシばっかり食べさせられたんだよっ!!!!!」
「それに比べて!! テメーは自由に生きられっ!! うまいもの食べられてっ!!!」
「優しい親に囲まれてよぉっ!! だからテメーをターゲットにしたっ!!!」
「ゴルアアァァァァァーーーーーッ!!! 幸せなテメー見ていると腹が立つんだよぉっ!!!!!」
「だから藤枝っ!! 俺達はテメーの人生を奪うつもりだったっ!!!」
「そうだっ!! テメーを苦しめて社会に通用出来ないようにしてやろうとしたっ!!!」
「だがっ!! 思わぬ邪魔が入ったっ!! あのガキ共だったんだよっ!!!」

 思わぬ邪魔……? それって茉理ちゃんと橘さんの事ね…………。

「俺達は高校入試に全て不合格になったっ!! テメーが俺達を追い詰めたからだっ!!!」
「帰る所失ったんだよっ!! 高校不合格なんてよっ!!! あの教育親が許すと思うかっ!!!」
「ゴルアアァァァァァ!!! 俺達に残されたのは復讐のみだぁっ!!!」
「藤枝ぁっ!! テメーが終わったら今度は渋垣に橘だぁぁぁっ!!!」
「そうだっ!! 俺達の楽しみを邪魔したあのガキ共だっ!!!」
「まずはテメーを再起不能のボロボロにしてやるっぞぉぉぉっ!! 藤枝保奈美ィィィィィッ!! ゴルアアァァァァァァ!!!!!」

 な……なんて奴等なのっ!!!
 わ……私が終わったら、こ……今度は茉理ちゃんに橘さん…………?
 ど……どこまでも卑劣な奴等なのっ!!!

「どうやら、テメーは痛みでは参らせられないようだな…………」
「そうだな……、叩いても無駄らしいな…………」
「チッ!! あがきやがってよぉっ!!!」

 とことん逆らってやる……、こんな……こんな卑劣な奴等に負けるもんですかっ!!!

「だったら、犯せばいいさ」
「そうだな……、女ってのはなぁ……、犯されるのが最大の屈辱なんだよな〜〜〜っ」
「へっへっへ……、テメーの純潔をたっぷり汚してやるぜえぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 な……何ですってっ!?
 お……犯すっ!? 犯すって…………ま……まさか……あ……アレなのっ!?

「オラアァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 ビリビリビリビリビリーーーーーーーーーーッ!!!!!

「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」

 お……男がいきなり私の服を引きちぎったっ!!!
 ううっ!? ぶ……ブラにパンティが……、み……見られるっ!?

「へっへっへ……、いい体しているなぁ……藤枝ぁぁぁぁぁ…………」
「その汚れを知らない体に、たっぷりシてやるぜぇっ!! へっへっへ…………」
「とことん汚してやるっ!! 二度と再起出来ない様に汚しまくってやるぞっ!! ゴルアアァァァァァッーーーーーーッ!!!!!」

 い……いやぁっ!!
 こ……こっちに来ないでっ!!!

「いてまえぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
「い……いやあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 も……もう駄目っ!! お……犯されるっ!!!!!

「待てっ!!!」

 えっ!? こ……この声はっ!?

「て……テメーは久住っ!!!」
「な……何でこの場所が分かったっ!!!」
「こ……ここは俺達の秘密基地だぞっ、ゴルアアァァァァァ!!!!!」

 な……なおくん…………、なおくんが来てくれたの…………?

「お前等はもう終わりだっ!! 既に茉理が警察に連絡しているっ!!!」
「もう逃げられないぞっ!! 連絡してから既に四分以上経過しているっ!!!」
「な……何だとぉっ!!」
「く……久住っ!! て……テメェッ!!!」
「ゴルアアァァァァァーーーーーッ!!! く……くそっ!! せめて保奈美をこのナイフでブッ刺してやるっ!!!!!」
「そうは行くかっ!!!」

 ビュッ!! ゴオォォォォォーーーーーーーンッ!!!!!

「ギャアァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 な……なおくんが私にナイフを振り上げた男の顔に石を命中させたっ!!!
 た……助かったよ、なおくん…………。

「そこまでだっ!! お前等動くなっ!!!」
「障害及び婦女暴行及び殺人未遂の現行犯で逮捕するっ!!!」
「逃げようとしても無駄だっ!! お前等を連行するっ!!!!!」

 こうして、いじめっ子三人衆は警察に連れて行かれたの…………。
 ありがとう……、なおくん…………。


―― そして ――

 あれから私は事情を話す為に警察で話をした……。
 あの三人組が小学一年生の時からいじめの発端になった事から、学校生活での事。
 そして陰口で私達を憎む発言していた事、最後にあの一件の事を全て話した…………。
 そして事情徴収が終わり、私はなおくんと一緒に帰ろうとしていた…………。

「ねぇなおくん、どうして私があの三人組にあそこで襲われた事を知ったの……?」

 そう、急ぎの用だとか言っていたなおくんが、何故あの場所に私が襲われていたのを知った事……。
 不思議だった……、何故かタイミングが良すぎたの…………。

「ああ、屋上にいた女子生徒が俺のケイタイに電話してくれたんだ」
「上から見て何か様子が変だ……、と思ってケイタイで連絡してくれたんだ…………」

 あ……あれ……、見ていた人がいたんだ……、でも…………。

「でも探すのが大変だった、その屋上にいた女子生徒も最終的にどこまで連れて行かれたから分からなかったから……」
「そこで茉理とちひろちゃんも呼んで、一緒に探してもらう事にしたんだ」
「詳しい場所まで探し当てるのが大変だった……、警察に連絡しようにも、どうしたら分からなくて…………」
「俺と茉理は探していた……、そうしたらまず、男の罵声が聞こえたんだ」
「次に保奈美が必死になって叫んでいるのが聞こえたんだ」
「これで大体理解出来た、だから茉理やちひろちゃんには警察に連絡を頼んで、俺があの場所に速攻に向かったんだ」
「そして俺は更に探して、あれから約四分過ぎに保奈美達の下へたどり着いたんだ…………」

 そうだったんだ……、まずは屋上の女の子がなおくんに教えてくれて……。
 そして、なおくんと茉理ちゃんと橘さんが探してくれたんだ…………。

「茉理ちゃんと橘さんにもお礼を言わないとね……」
「ああ、保奈美が無事だった事を教えないとな…………」

 また茉理ちゃんや橘さんやなおくんに助けられた…………。
 本当に……本当にありがとう…………。

「すまなかったな、保奈美」
「え!?」

 ど……どうして謝るの、なおくん…………?

「あんな……あんな連中が野放しになっているのに、保奈美を一人にしてしまって…………」
「俺が……、俺が一緒だったらあんな事にはならなかったのに…………」

 な……なおくん…………。
 ううん……、それは違うの…………。

「そんな事無い、なおくんだって事情はあったんだし…………」
「それに、あのままだったら一生私は外に出れなかったと思う……」
「だから良かったのかえって……、あいつ等が警察に捕まって私はもう安心できるから…………」
「あいつ等は警察に捕まらない限り、きっと私の幸せを邪魔するわ」
「だから……、いなくなってすっきりしたの」
「ほ……保奈美…………」

 そう、今回の事があったからあいつ等が私の目の前からいなくなったの……。
 そして八年間の因縁……、これで完全に決着が着いたの…………。
 あいつ等はそう簡単に社会に戻れないでしょう……、いくら未成年でも…………。
 私を八年間に渡っていじめてきたから……、あいつ等がどんなに悪い奴等なのか教えたから…………。
 もう、私の幸せを邪魔する者はいなくなった…………。


〜 エピローグへ続く 〜


最終章:エピローグ

 私は藤枝保奈美、蓮美台学園の二年生…………。
 あの戦いから一年ちょっと……、そう、茉理ちゃんも橘さんも合格したの。
 私は二人に勉強を教えたの、だから彼女達試験は余裕で合格出来たの、良かったわ。
 そして私はなおくんの家にいるの……、そう……起こすために…………。

「なおくん、なおくん、起きて!!」
「ZZZZZ…………」

 もう、なおくんたらっ!!
 はぁ……、なおくんたらっ中々起きないんだもん…………。

「なおくんっ!! もう走っても間に合わない時間よっ!!!」
「ZZZZZ…………」

 もう、なおくんたらっ……、絶対にわざとね…………。

「あんまりやりたくなかったけど……、この手で行こうかしら…………」
「ZZZZZ…………?」
「こうやって……、ベッドの下に手を入れると……、あっ、何か固い雑誌があるわ」
「どわあぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」

 あはっ、効果抜群だわ。

「お……お前なぁ…………」
「なおくん、学校へ行こう」
「……げっ!! もうこんな時間っ!!!」
「だから言ったでしょ、走っても間に合わない時間だって」
「し……仕方ないっ!! 保奈美っ!! アレの準備するぞっ!!!」
「うん!!」

 なおくんは愛車「世界タービン号」を急いで用意する。
 そして私はその後ろに乗るの。

「だあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
「頑張れ頑張れ、な・お・く・ん」

 なおくんは全速力で学園に向かっていく。
 そして学園に着いたわ。
 そして教室に着いたの…………。

「あっ、おはようっ!! 久住君に藤枝さんっ!!」
「おっ!! ギリギリセーフだな、直樹」

 この人達は新しい友達なの。
 女の人が天ヶ崎美琴、男の人が広瀬弘司。
 高校一年生の時からの新しい友達なの。

「ぜぇぜぇ……、な……何とか間に合ったか…………」
「おはよう、天ヶ崎さんに広瀬君」

 ガラララララ…………。

「は〜い、皆さん席について下さい」
「それでは出席を取ります、秋山さん!!」
「はい!」

 私達の担任の先生は野乃原結。
 体や声はまるっきり小学生なの…………。
 なおくんは初めて会った時には身長まで聞いちゃって、もう、なおくんたら…………。
 そして、私は天文部に差し入れを持って来たの。
 ちなみに天文部のメンバーは、なおくんと広瀬君と天ヶ崎さん、そして顧問の先生は野乃原先生なの…………。

「あっ、いらっしゃいっ!! 保奈美さん!!」
「あっ、茉理ちゃん」
「こんにちは、藤枝先輩」
「橘さんも」

 茉理ちゃんは、このカフェテリアのウェイトレスやっているの。
 そして橘さんは一人の園芸部員なの。

「はい、料理部からの差し入れです」

 そう、私は料理部に入ったの。
 同じ料理部の子からも色々私に聞いてくるわ、そう、あの付属の時みたいに…………。

「おう、ありがとな、保奈美」
「サンキュー、藤枝さん」
「あっ!! 杏仁豆腐まであるっ!!」
「プリンもありますっ!! 美味しそうですっ!!!」
「流石ですね、保奈美さんの料理!!」
「す……凄いです、藤枝先輩…………」
「どんどん食べてね」

 そしてみんなが料理を食べる。
 みんなが美味しいって言ってくれる、それが本当に楽しいの。
 そして部活が終わって…………。

「保奈美、待たせたな」
「ううん、今来たところ」
「それじゃぁ帰ろう、なおくん」
「ああ…………」

 そして私となおくんは二人っきりで下校する…………。

「それにしても保奈美、あの時は本当に無茶をしたな…………」
「だって、私は負けたくなかったもん、泣き虫から卒業したかったし…………」

 そう、私はあの時「泣き虫を卒業する」の一心で戦っていたの…………。
 あそこで泣いていたら……、自分自身がいつまで経っても進歩しないから…………。
 そしてあの事件数日後、あの三人の親達が私に謝ってきたの…………。

―― 当時の回想 ――

「済まなかった!! 私の息子が!!」
「ああ……私が余りにも勉強を押し付けてしまったが為に…………」
「間違っていた……、私達が間違っていたんだ!!!」

 どうやら事情徴収で親達が全て理解したみたい……。

「それで憎しみが、私達では無く、みんな貴方に行ってしまって!!」
「ああ……、私達の過ちが保奈美ちゃんに取り返しがつかないことを…………」
「学歴社会の今、勉強が出来なければ世の中通用しなくなる……、だが勉強だけでは駄目だったんだ!!!」
「そうだっ!! 遊ぶ事も大事だったんだっ!! 部屋に閉じ込めて勉強させるだけでは駄目だったんだ!!!」
「あああ……、もっと……、もっと美味しいの食べさせてあげれば…………」
「贅沢は敵だと教えたかっただけだったのだが……、まさか……こんな事になるとは…………」

 どうやら親子のすれ違いが生み出した悲劇だったのね…………。
 そう、私をいじめていた元凶は、ここから生み出されたのね…………。
 私は……私は……、憎しみを押さえつけながら、この親達に言ったの…………。

「そうだったの…………」
「だったら、今度から息子さん達に優しくしてあげてください……」
「彼等が出所したら……、彼らを今度こそ……幸せになれる様に…………」

 そう、厳しさだけでは人間駄目になるの…………。
 だからあの三人組は、私をいじめて気分転換していたの…………。
 この人達が……、この人達が……、もっと子供に優しくしてあげれば…………。
 彼等の……、彼等の憎しみが……無くなるはず…………。

「ああ、全て私達のせいだ、今後息子を大事にしよう…………」
「ああ、なんて優しい子……、あんな酷い目に遭わせたと言うのに…………」
「今度からあの子の好きな物……、好きな事……、楽しめる様に暮らせるようにしよう…………」

 これで本当に全てが終わった…………。
 彼等がいつ出所しても、もう私には何もしないはず…………。
 そう、みんなが過ちを知り……、そしてこれからは…………。

―― 回想終わり ――

「それにしても保奈美は強くなったよな〜っ、初めて出会った時は何かオドオドしていたし…………」
「そう、誰かさんのお陰で強くなれたの」

 そう、私を強くしてくれたのは、茉理ちゃんと橘さん…………。
 そしてなおくん、あなたもよ…………。

「なおくん、大好きよ…………」

 そう、私達はあれから恋仲になったの。
 茉理ちゃんは「直樹っ! 保奈美さんによくも毒牙を掛けたなー!!」とか騒いでいたけど…………。
 でも……、最初に告白したのは私だったの…………。

「俺もだ、保奈美…………」
「んんっ……なおくん…………」

 私達は長い口付けをする…………。
 ああ、私の大好きななおくん…………。

「保奈美、これからは俺が守ってやるからな……、そして……誰よりも愛している…………」
「私もよ……、なおくん……、世界一誰よりも愛しているわ…………」

 こうして彼氏が出来て私は幸せだった…………。
 やっと……やっと……本当の幸せを手に入れたの…………。
 ああ、生きていて本当に良かった…………。


 こうして、幸せな人生を送る保奈美であった…………。


〜 完 〜

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